不眠には脳内の「眠り時計」の狂いを正す

体内時計=眠り時計

不眠を解消したい、睡眠の質を改善して仕事もばりばり行いたい! このような悩みを持っている人は、睡眠時問の長さや、グッスリ眠るための方法など、眠ることばかりに神経質になりがちです。しかし、眠っている時間があれば当然、起きている時間問もあり、2つは常に連続しています。

睡眠をうまくコントロールするには、眠ることと同時に、起きている時間常にも気を配るべきです。そこで、まずは眠りと目覚めをもたらす生体リズムについてです。

人の脳と体は、時問とともに規則性のあるリズムを刻んでいます。これを生体リズムと呼び、1日の流れを作っています。そして、生体リズムが作り出す時計のようなしくみが「眠り時計」(正式には「体内時計」という) です。

眠り時計は、脳の視床下部しという部位の中にある視床下部が担っています。この眠り時計によって、体は、一定の時間がくると眠くなり、ある程度の時問眠ると目覚めるという、自然な眠りのリズムを毎日くり返しているのです。

ところが、深夜まで起きていたり、休日に昼近くまで眠っていたり、仕事や人問関係でストレスがたまったりすると眠り時計のリズムが乱れ、眠くなるタイミングがずれて寝つけなくなってしまいます。

また、海外旅行などで昼と夜の時問がずれても、眠り時計のリズムが乱れて寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりします。こうした眠り時計の狂った状態が長く続くと熟睡できずに、不眠を招くことになるのです。

少し専門的になりますが、眠り時計のしくみです。眠り時計の1日の長さは人によって多少違いますが、約25時問周期で刻まれます。
ところが、地球の自転による1日は24時間なので、両者には1日約1時問ずつのずれが生じます。しかし、人間の脳には、眠り時計を24時間周期に合わせて活動できる機能が備わっているのです。

例えば、起床後に日光を浴びると、1日のスタートが1時問早まり、体内時計がリセットされるので、毎日規則正し生活を送ることができます。それとは反対に、何らかの原因で眠り時計が狂ったままだと、不眠などの睡眠障害が起こるわけです。

体内には、季節や生活環境の変化などに合わせて体の状態を一定に保とうとする機能もあります。これを、ホメオスタシス(生体恒常性)といいます。例えば、夏に気温が上がったり、冬に気温が下がったりしたとき、体はそれに順応できるように放熱や保温をして体温を一定に保とうとします。これも、ホメオスタシスという機能の1つなのです。

実は、眠り時計とホメオスタシスがきちんと作用しなければ、生体リズムが乱れて睡眠の貿が低下し、不眠を招きやすくなります。

睡眠に関連している生体リズムは3つ

体には、さまざまな生体リズムがあります。体内のあらゆる臓器が一定のリズムを刻んでいるといっても過言ではありません。中でも日常生活で私たちが自覚しやすく、睡眠に深くかかわっているのは、「眠り・目覚めのリズム(睡眠・覚醒リズム)」「メラトニンリズム」「深部体温リズム」の3つです。

睡眠・覚醒リズムとは、眠り時計が刻む1日の周期の中でも、脳の働きを維持するために、大脳を眠らせ、しつかり休ませるシステムです。

脳には、判断や優先順位を決める「大脳」と、睡眠に導く神経がネットワークを作る「脳幹」という部位があります。そして、脳幹の睡眠に導く神経が働くと大脳が眠り、翌日の働きに備えます。

そして、この大脳を眠らせるシステムが強く働く時間帯は、起床から8時問後と2時問後の2回。例えば、朝6時に起きた場合、 午後2時と明け方4時が最も眠くなる時間帯になるわけです。

メラトニンリズムは、睡眠を促す脳内物質であるメラトニンが増えたり減ったりするリズムです。

メラトニンは、日光を感知すると減少し、夜暗くなると急遜に増加するという特徴があります。昼問はメラトニンがほとんど分泌されませんが、基本的には夜の9時ごろから分泌が盛んになり、夜の‖時ぐらいに眠気を誘いやすくなります。眠ってから3時間後に分泌がピークになり、朝方には減少して目覚めやすい状態になります。

深部体温リズムは、体内の深部(内臓)の体温が変化するリズムのことで、起床から11時間後に最も高くなり、222時間後に最も低くなります。例えば、朝6時起床の場AR深部体温は夕方5時に最も高くなり、早朝4時に最も低くなります。

これら3つのリズムは互いに同調し合っており、その調和がくずれると、不眠を招きやすくなります。不眠の解消には、これらのリズムの乱れを起きている時間常に正すことが肝心です。

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不眠は、肥満、高血圧、糖尿病、心臓病まで招く

不眠は脳へのダメージが大きい

不眠にも、軽度のものと重度のものがあります。眠れない日が1週間に3日以上あり、それが1ヶ月以上続くと慢性不眠と考えられます。こうした重い不眠はもちろんのこと、たまに寝つけない日が続く軽い不眠でも、軽視してはいけません。なぜなら、不眠の本当の原因にはウツ病が隠れていたり、脳の衰えを早めて認知症(ボケ)を招いたりすることがあるからです。
睡眠には重要ないくつかの役割がありますが、特に大切なのは「脳と体を休める」「脳と体の壊れた細胞の修復・再生」という働きです。睡眠には、体を休める「レム睡眠」と、脳を休める「ノンレム睡眠」があります。この2つが交互に現れることで、脳も体も休める「質のいい睡眠」が得られるのです。

レム睡眠では、体は休んでいるものの脳の一部が働いていて、記憶の整理など情報処理をしています。レム睡眠は、浅い眠りといわれます。
一方、ノンレム睡眠は、脳が眠る代わりに、体は成長ホルモンの胱献や免疫機能を働かせて疲れを解消します。ノンレム睡眠は、深い眠りといわれます。
ふつう、人間は90~110分の周期で、レム睡眠とノンレム睡眠をひと晩に4〜5回くり返しています。若いときは寝ついた最初の周期から深い眠りに入りますが、高齢になればなるほど深い眠りに入りにくくなったり、深い眠り自体がなくなったりします。

睡眠中は、このように脳と体を休ませると同時に、壊れた細胞の修復や再生が行われます。その役割を担っているのが、成長ホルモンです。これは子供の成長を促すホルモンですが、大人にとっても、細胞の修復や疲労回復を促す役目を持ち、若返りホルモンとも呼ばれています。
この成長ホルモンの分泌が最も盛んになるのが通常、寝ついてからの3時問です。ところが、睡眠時問が不足したり、睡眠が浅かったりすると成長ホルモンが減って、全身の細胞の修復・再生が十分に行われません。この状態が長く続けば脳が衰え、病気も招く危険性が高まるのです。
睡眠の貿が惑いと、脳にダメージを与えて、認知症を招く危険性を高めます。

命にかかわる病気の引き金になる場合も

不眠は、高血圧や糖尿病・脂質異常症・肥満などの引き金にもなります。こうした生活習慣病は、加齢や惑い生活習慣によって起こりますが、その根底には動脈硬化があります。誰でも50蔵前後になると、動脈硬化が進み、それにつれて血圧も上がってきます。特に不眠になると、自律神経のうち、体を活動的にする交感神経の働きが高まります。その状態が続けば、体は緊張しっぱなしになり、慢性的に血圧が高くなるのです。

例え、一晩徹夜をしただ止りで、翌朝の血圧の値がふだんより10mmHgも上がることがわかっています。不眠が続けば血流が悪くなり、血管内に脂質が蓄積されて脂質異常症も招きやすくなると考えられます。また、不眠が続くと血糖値をコントロールするインスリンの分泌量が減るため、糖尿病も招きやすくなります。
実際、糖尿病の患者さんの8潮は、不眠症などの睡眠障害を抱えているといわれています。肥満も、不眠と深くかかわっています。体内では、空腹ホルモンと満腹ホルモンが分泌され、互いにバランスを取って働いています。
不眠になれば空腹ホルモンが増え、満腹ホルモンが減ります。その結果、満腹でもつい食べすぎて太ってしまうのです。さらに、不眠によって交感神経の働きが高まれば、心臓に大きな負担をかけます。そのため、狭心症や心筋梗塞などの命にもかかわる心臓病を招く危険性も高まります。

最近は、睡眠とガンの問係も指摘されています。以上のように、不眠は動脈硬化を進行させ、寿命を縮める病気を招く引き金にもなります。これを防ぎ、健康な老後を迎えるには、自分の体内リズムに合った睡眠をとることが何よりも大切です。

高齢者においては不眠は3人に1人、うつやぼけを誘発する原因にもなる

高齢者に夜眠れずに苦しんでいる人が急増中

布団に入ってからなかなか寝つけない、睡眠が浅く夜中に日が覚める、朝早く根が覚めてしまい、日中に頭がボーっとするーこうした不眠の症状に悩む人が急増しています。そして不眠は、加齢により起こりやすくなるという傾向です。不眠症状のある人は、日本人全体の約2割、そして65歳以上の高齢者の約5割が不眠を訴えています。

最近は40代後半から50代ぐらいから不眠に悩む人が急増しており、今や成人の3人に1人が不眠のなんらかの症状に悩んでいるといえるでしょう。これまでは5人に1人が不眠だと言われてきましたがあっという間に急増してしまいました。それだけ現代人は眠れないのです。

不眠が増えている背景には、高齢化の進展や夜遅くまで起きている不規則な生活、インターネットの普及、仕事や人問関係によるストレスなど、さまざまな要図があげられます。そして実は、中高年以降に不眠が多いのは、脳の老化とも深くかかわっていることがわかってきました。

そもそも睡眠は、人間が生命を維持するうえで必要不可欠なもの。睡眠には主に「脳と体を休める」「脳と体の壊れた組織の修復・成長」「ストレスの発散」「記憶の固定」という役謝があります。

そして、人間のの体には、疲れると眠くなる、夜になると眠くなるというしくみが備わっています。このしくみを担っているのが、脳です。疲れると眠くなるのは、体の疲労に伴って臓内に蓄積される物質に睡眠を促す作用があるからです。
この物質を「睡眠物質」と呼びます。また、夜になると眠くなるのには、脳の視床下部という部位にある視交叉上核が担っている「眠り時計」(正式には「体内時計」という) のしくみが深くかかわっています。眠り時計は原則、日光を感知することで正常に作動します。ちなみに体内時計が乱れるとガンにも侵されてしまうケースもあるほどです。
ガン患者さんを調査した例ではガンにかかった時の生活状況を調べると「眠れない」「よく眠れない」などに該当する人が多数いらっしゃいました。

そして、昼問は活動し、夜は眠るという生体リズムが作られているのです。具体的には、日光が視交叉上核に届くと、本来は1日約25時問周期の生体リズムが一正常な1日24時間周期に調節されます。それとともに、体温や、睡眠物質の1つであるメラトニンの分泌量もコントロールされるのです。ところが、なんらかの原図によって、今述べた睡眠のしくみに異常が起こると不眠になってしまうのです。

不眠を軽視してはいけない

ふつう不眠は、気温・湿度の変化や強いストレスなどによって誰にでも起こります。こうした一過性の不眠は、その癖困が解決すれば自然に改善されます。しかし、不眠の症状が長く続いて、苦痛を訴えるなど日常生活に支障が出ると、病院で不眠症と診断され、治療が必要になります。
ちなみに不眠症は、睡眠障害(睡眠に異常が起こる病気の総称) の1つです。不眠症を招く要因にはさまざまなものがありますが、大きく分けると

  1. 体調不良によるもの
  2. 生活環境によるもの
  3. ストレスによるもの
  4. 精神的な病気によるもの
  5. 嗜好品や薬によるもの

ものがあげられます。

1.体調不良

痛み・かゆみ・発熱・発作といった体調不良によって眠りが妨げられます。その引き金となるのは、狭心症や心不全などの心臓病、気管支ぜんそく、睡眠時無呼吸症候群(睡眠時に断続的に大きないびきをかき、いびきが中止したときに呼吸が止まる病気)などの呼吸器の病気、逆流性食道炎・胃潰瘍などの消化器の病気、甲状腺機能克進症などの内分泌系の病気、ガン、さらにはアトピー性皮膚炎などのアレルギー性の病気です。最近は、認知症や脳血管障害などの病気による不眠も増えています。特に最近、増えているのが突然死の危険性もある「睡眠時無呼吸症候群」です。→こちら。

2.生活環境

引っ越しや転職による環境の変化、海外旅行による時差ボケなどは、生体リズムが乱れ睡眠を妨げる要図になります。騒音・高温・多湿といった環境要因も見逃せません。

3.ストレス

仕事や人問問係の重圧、生活上の不安、災害や事故などでの恐怖体験など、ストレスで不眠になる人は多いものです。ストレスを受けると自律神経(意志とは無問係に内臓や血管の働きを十又配している神経)のうち、体を活動的にする交感神経が優位になり、脳が緊張状態になります。そのため、生体リズムが乱れて不眠になりやすいのです。

4.精神的な病気

うつ病、パーキンソン病、統合失調症など、多くの構神的な病気でも不眠が起こることがわかってきました。

5.嗜好品や薬

コーヒーや紅茶に含まれるカフェインには覚醒作用があり、タバコのニコチンには交感神経を緊張させる作用があり、どちらも睡眠を妨げる要因です。アルコール類も眠りを浅くします。そのほか、降圧剤やステロイド剤、ホルモン剤といった薬によって不眠になる人もいます。
不眠が続くと、疲労やだるさなど体の不調を招くだけではありません。脳の衰えを早めてうつやボケも招きやすいので、「たかが不眠」と軽視するのは禁物です。

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