やや高めに推移している値には危険がいっぱい

2008年に日本に導入された特定健康診査。その診断基準を見てどのように感じたでしょうか?「厳しすぎる」と感じた人も多いはずです。医療関係者の間にも、当初そうした批判が少なからずありました。

しかし、特定健診の目的を考えれば、それは必ずしも厳しすぎることはありません。むしろ、それくらい厳しくしないと、この健診の目的は達せられません。なぜなら、特定健診は病気を見つけるためのものではなく、「動脈硬化が速く進む集団を検出するための健診」だからです。特定健診の診断基準は、メタポリックシンドロームの診断基準をほぼ流用しています。

メタポリックシンドロームの診断基

腹囲男性85 cm以上、女性90 cm以上に加えて以下のうち2項目以上

  1. 血圧(上の血圧130mmHG以上、下の血圧85 mmHG以上のいずれかまたは両方、薬剤治療を受けている場合)
  2. 血中脂質(中性脂肪150mg/dl以上、HDLコレステロール4mg/dl未満のいずれかまたは両方、または薬剤治療を受けている場合)
  3. 血糖値(空腹時110mg/dl以上、または薬剤治療を受けている場合)

メタポリックシンドロームの診断基準の必須項目である腹囲の測定は、本来ならCTで内臓脂肪を撮るべきなのですが、それを簡便化して、腹囲を計ります。内臓脂肪はおへそを中心としたお腹まわりに蓄積されます。
メタポリックシンドロームの腹囲の基準値は、腹部CT検査の内臓脂肪面積102 cmに相当します。内臓脂肪面積が100平方センチ以上になると、それ以下より合併する疾患の数が5割アップすることがわかっています。
この腹囲の基準の妥当性についてはさまざま窒息見もあるようですが、ここではその議論はほかに譲ります。

血圧の数値は、高血圧症の診断基準の「正常高値」の値に準じています。上の血圧(収縮期血圧)、下の血圧(拡張期血圧)とも、これより高い圧力が血管壁にかかると、動脈硬化が促進されるリスクが高くなります。

血中脂質の検査では、中性脂肪とHDL(善玉) コレステロールを調べます。HDLコレステロールは余分なLDL(悪玉)コレステロールを掃除するコレステロール。中性脂肪が増えてHDLコレステロールが減ると、動脈硬化を促進させるLDLコレステロールが増えてしまいます。

LDLコレステロールは動脈硬化を促進させる直接的な因子なので、この診断基準にはあえて入れていないようです。血糖値の基準値は、メタポリックシンドロームに比べて、特定健診ではさらに厳しい値(空腹時100mg/dl以上)が設定されています。

また、特定健診は空腹時血糖に加えてヘモグロビンA1C(5.2% 以上)も基準項目に入っています。基準値を見ればわかるとおり、メタポリックシンドロームあるいは特定健診に該当する人は、病気ではありません。仮にすべての項目に該当したとしても必ずしも病気とはいえないのです。

しかし放置すれば、近い将来、狭心症や心筋梗塞、脳卒中になる確率が格段に高くなります。そうならないために、いまから予防しましょうと注意喚起をしているのが、特定健診です。

ところが、最近恐ろしいことがわかってきました。糖尿病、高血圧症、脂質異常症(高脂血症)といった、病院での治療が必要な病気になる手前の段階でも、すでに動脈硬化が進んでいるのです。ちょっと太めの人が、ちょっと血圧が高くて、ちょっとコレステロール値(または中性脂肪値)が高くて、ちょっと血糖値が高い。太めの人にこの「ちょっと高い」が重なると、動脈硬化がすごいスピードで進んでいきます。

だから、メタポリックシンドローム診断や特定健診では肥満があるか否かを重要視しているのです。

日本人は、もともと太らなくても糖尿病になりやすい遺伝子を持っているのです。そんな日本人が若い頃から太ってしまったら、どうなるでしょうか。当然、糖尿病や引き続き起こる動脈硬化の発病が早まってしまいます。そんな若い人の糖尿病の芽を早く発見し、早期に摘み取って発症しないように生活改善を促するのが、特定健診の目的です。
ちょっと太めでも、ちょっと数値が高めでも、病気ではないし、誰も何とも言いません。でもその蓑では確実に、動脈硬化が進行しているのです。それも、強烈なスピードで進行しているのです。

ガンより怖い糖尿病

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